「EVシフト」とは?日本と海外の現状、今後の動向について解説
カーボンニュートラルの実現に向け、ガソリン車から電気自動車(EV)への転換を図る「EVシフト」が注目されています。しかし、世界各国のEV普及状況に比べると、日本のEVシフトはまだまだ不十分です。
本記事では、EVシフトに関する日本と海外の現状や今後の動向について解説します。
目次
EVシフトとは?世界の潮流とEVを取り巻く環境
「EVシフト」とは、現在主流となっているガソリン車からEV(Electric Vehicle:電気自動車)への転換を図る動きのことです。
地球温暖化対策が喫緊の課題である現在、温室効果ガスの排出量と吸収量と除去量の差し引きをゼロにする「カーボンニュートラル」の達成が世界的に求められています。化石燃料を動力源とするガソリン車が主流のままではカーボンニュートラルの実現は難しいことから、現在、走行時に温室効果ガスを排出しないEVシフトの必要性が高まっています。
こうした中で、2022年には世界のEV販売シェアが10%を超えました。
出典:経済産業省 製造産業局 商務情報政策局 2023年4月5日「自動車分野のカーボンニュートラルに向けた国内外の動向等について」
EVの急速な普及を受け、自動車業界では「100年に一度の大変革」が起きているといわれています。
EVのメリット・デメリットや環境に優しい理由については以下の記事で解説しています。
EV(電気自動車)のメリット・デメリット、導入が進む背景、環境にやさしい理由とは
EV(電気自動車)はSDGsにどのように貢献する?
では、世界各国ではEVシフトのためにどのような取り組みを実施しているのでしょうか。
世界のEVシフト事例
EVシフトに向けた世界の取り組みとして、以下では中国、ノルウェー、イギリス、アメリカの事例について見ていきます。
中国
中国政府は、2035年を目処に新車販売を環境対応車のみとする(ハイブリッド車含む)目標を設定しています。また、2015年に発表された「メイド・イン・チャイナ2025」という計画では、EVは10大重点産業分野の1つに指定されました。
実際に、中国市場におけるEVシフトには目覚ましいものがあり、国別でのEV販売台数ではすでに世界トップとなっています。EV生産国としての存在感も増しており、中国大手自動車メーカーBYDの2023年上半期のEVの新車販売台数はアメリカのテスラ社に次いで、世界2位です。
ノルウェー
ノルウェーでは、新車販売のうち80%以上をEVが占め、EVの普及率が非常に高い国として知られています。
政府も2025年までに新車販売をEVと燃料電池車に限定するなど、EVシフトに向け高い目標を設定しており、EVの購入に対する補助金の提供や、EVの充電インフラの整備にも力を入れています。また、EVは寒さに弱いと言われていますが、北欧という寒い地域であるにも関わらず、EVシフトが非常に進んでいる点も注目すべき点です。
イギリス
イギリスでは、2035年までに新たなガソリン車・ディーゼル車の販売を禁止する計画を掲げており、EVシフトに力を入れています。政府はEV普及のために、補助金や充電インフラの整備などの支援策を提供しています。
こうした流れを受け、イギリスの自動車メーカーも高級自動車ブランドのEV化を急速に進めているところです。
アメリカ
アメリカはパリ協定に再加入するなど、近年環境政策に前向きな方針に舵を切っており、なかでもカリフォルニア州は2035年までに新車販売の全てを「ゼロエミッション車(走行時に温室効果ガスを一切出さない車)」にする目標を法により定めました。また、2030年までに乗用車と小型トラックの新車販売のうちEVと燃料電池車(FCV)の割合を50%以上にする大統領令も発令されました。
連邦政府は、EVの税制上の優遇措置や充電インフラの整備に対し資金を提供する取り組みを実施しています。
以上のように、世界ではEVシフトが加速していますが、日本のEVシフトはどのような現状なのでしょうか。
日本におけるEVシフトの現状と今後に向けた取り組み
日本のEVシフトは世界に比べて遅れているのが現状です。
以下では日本におけるEVシフトの現状と今後の目標・取り組みについてご紹介します。
EVシフトに乗り遅れる日本
日本自動車販売協会連合会によると、日本では、2022年度の新車販売のうち、EVの占める割合は約1.5%となっています。
出典:日本自動車販売協会連合会「2022年4月~2023年3月燃料別メーカー別台数(乗用車)」
日本でもEV新車販売台数は右肩上がりとなっており、新車販売に占める比率も2020年時点では1%を切っていたことを踏まえると伸びてきてはいますが、他の先進国と比較するとEVシフトは低迷しています。
日本の目標と今後の取り組み
たとえば、2021年1月18日の菅元首相の施政方針演説では、2035年までに「新車販売で電動車100%を実現」する方針が発表されました。この「電動車」にはEVだけではなく「HV(ハイブリッド車)」や「PHV(プラグインハイブリッド車)」も含まれます。
また、2021年に経済産業省が策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では、「自動車・蓄電池産業における電気自動車の普及加速」を明言。導入支援や買い替え促進策、充電インフラの15万基設置といった取り組みをはじめ、海外の後を追う形で、EVシフトを後押しする方針を掲げています。
日本のEVシフトの課題
日本でのEVシフトにおける課題としては、充電インフラの整備が現状では不十分とされていることや、ガソリン車に比べ車両価格が高いことなどが挙げられます。走行時には温室効果ガスを排出しないものの、電気を動力源とするため、充電する電気が発電される際に温室効果ガスが排出される問題や、EVを充電する時間帯に偏りが生じ、電力の供給がひっ迫する問題なども懸念されています。
こうしたEV導入における課題については、以下の記事で詳しく解説しています。
EV導入の課題とは?電力や社会コスト増大の懸念は「充電制御」で解決!
EVシフトを進めると電力が不足する?「充電制御」による解決策
まとめ
本記事でご紹介したように、世界のEVシフトの動きに追随する形で、日本政府も本格的に目標を設定し、その動きを支援する体制をとっています。国内の自動車メーカーも2022年以降、EV生産に力を入れる方針を打ち出しており、今後日本でもEVシフトが加速すると考えられます。
脱炭素社会の実現に向けて、企業におけるEV導入の動きも始まっています。社用車/公用車のEV化については、以下の記事で詳しく解説しております。
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EVの導入には課題もあり、失敗しないためには導入時に十分な検討が必要です。
以下の資料では、EVを社用車として導入する際のポイントを解説していますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
社用車EV導入 ガイドブック
本資料では、世界と日本のEVシフトの現状やEV導入の際に考慮すべきポイントをわかりやすくご紹介しています。社用車としてのEV導入をご検討されている企業のご担当者様はぜひご覧ください。