V2B/V2Gって何?法人車両における導入の課題とは?

社用車EVシフトのノウハウ
V2B/V2Gって何?法人車両における導入の課題とは?

EV(電気自動車)の蓄電機能を活用し、必要に応じてEVから建物などに電力を供給するV2B/V2Gという手法が法人用EVにおいても近年注目されています。オフィス電力のピークカットの実現や売電によるコスト削減などさまざまなメリットがあるといわれていますが、実際にそうしたメリットは法人においても享受できるのでしょうか。本記事では、V2B/V2Gの概要や一般的なメリット、またそのメリットの実現可能性などを解説します。

目次

V2B/V2Gとは?

V2BとV2Gは、EV(電気自動車)から建物などへの充放電を可能にする技術であり、「V2X」とも総称されます。昨今は社用車としてEVの導入が推進される中でV2B/V2Gへの注目が集まっています。本章ではまず、V2BとV2Gそれぞれの基礎知識について解説します。

EVのメリットやデメリットなどについては以下の記事で詳しく解説しています。

V2B(Vehicle-to-Building)

V2B(Vehicle-to-Building)は、EV(電気自動車)から企業のオフィスや工場等に給電する法人向けの技術のことです。
電気系統からEVに充電し、使いきれず余った電力をEVから供給するという考え方はV2Gと同様ですが、電力を供給する対象が異なります。

一般的には、V2Bを活用しEVから企業の建物に給電することで、建物の電力需要を補完することができるといわれています。

V2G(Vehicle-to-Grid)

V2G(Vehicle-to-Grid)とは、EV(電気自動車)と電力事業者の電力系統を接続し、電気の充放電を双方向で利用する技術のことです。
電気系統から充放電スタンドを経由してEVに充電を行い、EVで余剰電力が発生した場合は電力系統へと電力を戻すことができます。

この技術を用いることで、例えば太陽光発電や風力発電など、天候によって発電量が左右される再生可能エネルギーの電力平準化にEVの電力を活用することができるといわれています。

なお、V2B/V2Gと似た言葉にV2H(Vehicle-to-Home)というものがあります。V2Hは、充電した電気を家庭で利用できるようにする技術のことであり、法人向けではありません。企業では活用されませんが、EVを蓄電池として活用する点ではV2B/V2Gと同じです。

V2B/V2Gの一般的なメリット

V2B/V2Gを活用することで、EV本体に「蓄電池」としての機能を持たせることができます。そのため、一般的には以下のようなメリットがあるとされています。

メリット③:余剰電力を電力事業者に売電することによる収益

V2Gを導入することで、企業はEVの余剰電力を電力事業者に売り渡すことができます。
そのため、月々の電気料金を売電収入で一定程度まかなうことができ、長期的にはV2G機器の初期費用も回収可能であるといわれています。

メリット①:オフィス電力の「ピークカット」

V2Bを導入することで、企業はEVに充電した電力をオフィスに送ることができます。そのため、平日の昼間など、電力需要が集中しやすい時間帯にEVから給電することでオフィスの電力使用量を削減し「ピークカット」を実現できるとされています。

電力のピークカットや類似の概念のピークシフトについては以下の記事で詳しく解説しています。

メリット②:EVの災害時における「電力インフラ」としての活用

V2Bを活用することで、自然災害発生時や停電時でも、EVに充電した電気を建物などに送ることが可能であるとされています。そのため、非常用の電源(電力インフラ)にもなり得ることが期待されています。

V2B/V2Gの法人車両における導入の課題とは

V2B/V2Gの法人車両における導入の課題とは

以上のようなメリットがあるとされるV2B/V2Gですが、実際にそれぞれのメリットを法人において享受することは可能なのでしょうか。以下では、先の3つのメリットそれぞれの実情を解説していきます。

ピークカットは現実的には難しい

まず、1つ目のメリットとして挙げた「ピークカットの実現」ですが、理論上は可能であるものの現実的には難しいのが実情です。
その理由としては、社用車/公用車として導入されるEV車両は日中に稼働することが多く、昼間の時間帯は充放電器に接続されていない可能性が高いことが挙げられます。NTTグループでの実績データによれば、社用車の日中の外出率は約8割です。そのため、日中の電力需要のピーク時にEVの社用車が「蓄電池」としての役割を果たすことは難しいといえます。

災害時に非常用電源となる可能性は低い

次に、EV(電気自動車)が「災害時の非常用電源となる」可能性についてですが、地震や豪雨といった大規模自然災害発生時にV2B充放電器やEV車両、建物への電力線すべてに損傷がないことが前提となります。
また、EVから放電できる出力は1台当たり10kW程度で、業務用空調の消費電力が3kW程度であれば約3台空調に対して電力を供給することが可能となります。家庭と異なり、EV1台で法人用の建物全体を賄うことは不可能であり、V2Bの供給先機器の選定が重要となります。

EVによる災害対策を考える際は、どのような災害を想定し、その災害時において機器をどのように運用したいのか、またこの対策がコストに見合っているのかをよく見極めることが重要です。

売電による収益性は低い

最後に、売電による収益性ですが、現行制度では高い効果を得られる可能性は低いといえます。ここでは、V2Gによって売電した場合の収益について、以下の条件を例に試算してみます。

 ・コスト回収までに必要な日数:500万円÷374.4円/日≒13,355日
 ・コスト回収までに必要な年数:13,355日÷365日≒37年

上記の通り、仮にV2Gによる売電を365日運用したとしても、回収までに必要な年数は約37年となります。収益化の手段として容量市場※への拠出など他の市場の活用も考えられますが、価値が創出できる時間帯に車両が待機している可能性は低く、安定的な収益源とすることは困難です。

※容量市場とは、発電事業者が持っている「容量」に対して、小売電気事業者が、市場メカニズムで決まった額を支払うものです。

このように、現行制度では法人におけるV2Gによる収益性は低く、収益化のためには車両をほとんど使わずほぼ定置型蓄電池のように使用する前提となることに注意が必要です。

ただし、家庭で用いる場合(V2H)は機器代と工事費がより安価になり、昼間に車両が待機している時間帯が長いため、4~5年程度でコスト回収が見込める場合があります。

このように、V2B/V2Gの導入を検討する際は、今回例示したような課題を慎重に精査することが大切です。

V2B/V2Gと比較し現実的な解とは?

それでは、V2BやV2G以外で、ピークカットやコスト削減といったメリットを得られる方法はないのでしょうか。本章では、V2B/V2Gと比較して低コストで導入可能な「V1G」についてご紹介します。

V1Gとは、EV充電器から車に対して流す電気を1方向のみ制御する考え方・手法のことです。V2B/V2Gと区別する用語としてつくられました。

V2B/V2Gの場合、配線・設置工事以外に設備や電気系統に電気を逆流させるための電気工事が必要です。しかし、V1GはEV車両から充電器に電気を戻すことがないため、そのための設備コストがかからず、配線・設置工事のコストのみで済みます。

また、V1G機器は充電のタイミングや出力をコントロールすることができるため、EVを複数台導入した場合でも、特定の時間帯に充電が集中することによる設備容量超過や、契約電力を超過することを防げるため、ここでもコスト削減効果が見込めます。

もし、EV導入時の初期コストを抑えたいとお考えの場合は、必要最低限のコストでV1Gの設備を導入し、トータルのコストを最小化することがおすすめです。

充電制御に関する詳細は、以下の記事からご覧ください。

EV導入時は最適な充電設備を選択しよう

V2B/V2Gは導入後に副次的な効果があるとされていますが、規模や使い方によって費用対効果は大きく異なってきます。対して、V1Gは建物や電気系統への放電機能はありませんが、必要最小限の設備コストで導入が可能です。
これらを導入する際には、長期的に費用対効果が見込める設備投資なのかを検討し、自社の車両運用に適した設備を選択することが大切です。

以下の資料では、企業でのEV導入に必要なステップや注意点について網羅的に解説しています。社用車EVの導入にご関心のある方は、ぜひお役立てください。

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社用車EV導入 ガイドブック

本資料では、世界と日本のEVシフトの現状やEV導入の際に考慮すべきポイントをわかりやすくご紹介しています。社用車としてのEV導入をご検討されている企業のご担当者様はぜひご覧ください。

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