EV充電器を遠隔制御するメリットとは

EVの普及に伴い、職場や公共施設などさまざまな場所でEV充電器を見かけることが増えてきましたが、通常であれば複数のEV充電器を導入する場合、設備容量の増強が必要となり、契約電力も増加させる必要があり、電気料金が上昇してしまいます。そこで注目されている技術がEV充電器の遠隔制御であり、導入することで電気料金をはじめとするコストの上昇を抑えることができます。
本記事では、EV充電器の種類や利用シーン、遠隔制御の必要性とメリットを解説します。
目次
EV充電器とは
EV充電器は、電気自動車(EV)のバッテリーを充電するための機器です。
EV充電器には、普通充電器と急速充電器の2種類があります。
普通充電器:主に家庭や職場などに設置される充電器で、出力は3~6kWほど、充電時間は数時間から十数時間程度です。
急速充電器:高速道路のサービスエリアや商業施設などに設置されることが多い充電器で、短時間で充電できます。出力は50~150kWほどで、バッテリーの状況にもよりますが30分で80%ほどの充電が可能です。
EV充電器の詳細はこちらの記事をご覧ください。

EV充電器を利用するシーン
EV充電器の利用シーンは以下の3つに分けられます。
基礎充電
自宅や職場など、日常生活や仕事の拠点となる場所で行う充電方法です。
普通充電設備を使用するのが基本です。
例えば社用車/公用車が夕方に帰社/帰庁した後、職場の普通充電器で充電しておくことで、翌朝には満充電になっており、スムーズに乗車ができます。
目的地充電
旅行先の宿泊施設や商業施設など、滞在時間が比較的長い目的地で行う充電方法です。ホテルやショッピングモールなどの駐車場に設置された普通充電器を使用します。
滞在時間を利用して効率的な充電が可能です。ただし、滞在時間が短い場合には必ずしも満充電になるわけではありません。
経路充電
長距離移動中に目的地に到着するまでの途中で行う充電方法です。主に高速道路のSA/PAや道の駅、カーディーラーなどに設置された急速充電器を使用します。
短時間での充電を想定しており、基本的には1回30分までの利用制限があります。
基礎充電は、職場や自宅などにある自ら保有する充電器を使用することから「プライベート充電」と呼ばれ、目的地充電と経路充電は公共の施設に設置された充電器を使うことから「パブリック充電」と呼ばれます。
出先では目的地充電や経路充電を利用する場面もありますが、通常は基礎充電(プライベート充電)が多く利用されます。そのため、EVユーザーの利便性を高めるためには基礎充電の使い勝手を良くすることが重要です。
EV充電を遠隔制御する必要性
近年はEV充電の遠隔制御の必要性が議論されています。遠隔制御とは、EV充電器の操作や状態確認を離れた場所から行う技術のことです。充電開始/停止のタイミングを変えたり出力を低くしたりすることで、充電をコントロールできます。
複数のEVを同時に充電すると、契約電力の上限を超えてしまう可能性があり、電気料金の上昇につながるほか、場合によっては設備増強も必要です。遠隔制御を行うことで、そうした対策をとらずに複数の充電器を運用できます。また、地域の電力供給力不足への対応にも有効とされています。
EV充電器の充電制御についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

EV充電器を遠隔制御するメリット
EV充電器を遠隔制御することには以下のようなメリットがあります。
電気料金の抑制
複数台の充電器の合計出力が一定の値を超えないように遠隔制御することで、企業・自治体の建物全体での契約電力の範囲内で充電でき、電気料金が上昇するのを抑えることが可能です。また、電気料金メニューによっては、電力需要のピーク時間を避けて充電することで、充電コストの上昇を抑制することができます。
設備増強コストの抑制
EV充電器を複数台設置すると、場合によっては容量不足となり、設備増強や高圧受電設備の導入が必要になります。遠隔制御を行うことで既存の設備容量内でより多くの充電器を運用できるため、設備増強コストを抑制することが可能となります。
長期的な電気料金高騰の抑制
電力需要のピーク時間に多数のEV充電を行うとその地域の発電所や電力系統の増強が必要となり、そのコストがやがて電気料金に転嫁される懸念があります。遠隔制御によりEVの充電が集中する時間帯を分散し、電力消費量を平準化することで、電気料金高騰を抑制することにつながります。
EV充電器の遠隔制御を視野に入れて導入を進めよう
EVの充電には基礎充電、目的地充電、経路充電がありますが、コストや利便性を考慮すると普通充電器による基礎充電がメインになります。しかし、基礎充電において充電器を複数同時に使用すると電気料金や設備増強コストが増大する可能性があるため、遠隔制御の導入が選択肢になります。
遠隔制御を活用することでコストを抑制できるため、EV導入の際には積極的に検討しましょう。
以下の資料では、EV充電器選びのポイントや企業/自治体向けのEV充電制御システムを紹介していますので、ぜひご覧ください。

よくわかる EV充電器の教科書
本資料では、EV導入のカギとなる「充電器選び」のポイントをわかりやすくご紹介しています。EV導入に向けて、コストを抑えながら賢く充電器を選びたい方はぜひご覧ください。