脱炭素社会とは?実現に向けた課題と企業の取り組み例を紹介

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脱炭素社会とは?実現に向けた課題と企業の取り組み例を紹介

脱炭素社会の実現に向けて世界各国が達成目標を掲げており、企業も実現に向けて取り組みを加速することが求められています。再生エネルギーの活用や省エネの推進、社用車/公用車のEV化といった脱炭素の取り組みを進めることで、企業価値向上やエネルギーコスト削減などのメリットを得ることができます。本記事では、脱炭素社会の概要や実施における課題、企業が実践できる取り組み例などをご紹介します。

目次

脱炭素社会とは?求められている背景

脱炭素社会とは、地球温暖化の原因である温室効果ガスのうち、特に温暖化の主因とされる二酸化炭素(CO2)の排出量を実質ゼロにすることを目指す社会のことです。
脱炭素社会をめざすために、二酸化炭素排出量を最大限抑制するとともに、排出を避けられない二酸化炭素は吸収または回収・貯留するなど、排出量を実質ゼロにする様々な取り組みが求められています。

なお、温室効果ガスの排出量と吸収量が均衡し、実質的に排出量が差し引きゼロとなった状態を「カーボンニュートラル」と呼びます。

カーボンニュートラルの詳細や取り組むメリットについては、下記の記事で詳しく解説しています。

脱炭素が求められている背景として、地球規模の課題である気候変動問題の解決に向けて2015年に採択された「パリ協定」があります。パリ協定では、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」という世界共通長期目標が定められています。
この実現に向けて、世界各国で取り組みが進められており、120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げています。

脱炭素社会の実現に向けた国内外の取り組みと課題

世界各国では、脱炭素社会の実現に向けてさまざまな取り組みを実施しています。

海外の取り組み

・アメリカ
アメリカは、2019年にトランプ政権で一度パリ協定から撤退したものの、2021年にバイデン大統領が就任時にパリ協定への復帰を宣言しました。
バイデン政権は2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロに、2035年までに発電部門の温室効果ガス排出をゼロに移行すること、そして2030年までに洋上風力による再エネ生産量を倍増し、同年までに国土と海洋の少なくとも30%を保全すること等を目標に掲げています。

・イギリス
イギリスでは、2021 年10月の「COP26」の直前に、それまでの気候変動に対する各種の施策や行動指針をまとめた「ネット・ゼロ戦略」を発表しました。この中で、炭素排出量を2030年までに1990年比で68%に削減し、2050 年に「ネット・ゼロ」にすることを明言しています。
しかし、2023年9月にこの戦略は見直しされており、当初掲げていた目標達成時期を後ろ倒しにしています。

・EU
2018年に欧州委員会は、2050年のカーボンニュートラル経済の実現をめざす「A clean planet for all」という 「ビジョン」を公表しました。
このビジョンでは、対策内容について複数の前提のもと、3つの削減目標(80%減、90%減、ネットゼロ)とそれらに対応する計8つのシナリオを分析しています。

出典:経済産業省 資源エネルギー庁「令和2年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2021)」

日本の取り組み

2020年10月、日本政府は2050年までにカーボンニュートラルをめざすことを宣言しました(カーボンニュートラル宣言)。「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では、政策目標と実行計画をより具体的に策定しています。
2050年カーボンニュートラルをめざすため、2021年10月には新たに「第6次エネルギー基本計画」を閣議決定。中間目標として、2013年度比で2030年度に温室効果ガス46%削減を表明し、さらに50%削減をめざしたエネルギー政策の道筋を提示しています。

脱炭素社会の実現に向けた課題

日本では、化石燃料の依存度が高いことが課題です。2023年2月に公表された資源エネルギー庁の資料をみると、2021年度の日本の一次エネルギー供給構成のうち、CO2を排出する化石燃料(石油・石炭・LNG)が約83%を占めていることがわかります。

出典:経済産業省 資源エネルギー庁「日本のエネルギー エネルギーの今を知る10の質問」

化石燃料への依存を解消するため再生可能エネルギーなど非化石エネルギーへの転換が求められていますが、現状では供給量や安定性の面で化石燃料を完全に代替するレベルには達していません。

企業が脱炭素に取り組むメリット

2050年のカーボンニュートラルをめざすため、国は企業レベルでも脱炭素に取り組むことを期待しています。
気候変動対策(≒脱炭素)の観点を自社の経営方針・戦略に盛り込んだ企業経営のあり方は、「脱炭素経営」と呼ばれます。
従来、企業の気候変動対策は、あくまでCSR活動の一環として行われることが一般的でした。しかし近年では、気候変動対策は企業の社会的責務であると同時に経営上の重要課題であるとの認識から、会社一丸となって積極的に取り組む企業が増えています。

出典:環境省 グリーン・バリューチェーン・プラットフォーム 「知る01 脱炭素経営とは」

脱炭素経営に取り組むことは、企業にとってさまざまなメリットがあります。

企業価値向上・イメージアップにつながる

脱炭素に向けた取り組みは社会的な関心が高いことから、脱炭素経営への取り組みを表明することで企業に対する評価やイメージの改善につながります。
例えば、金融機関や取引先、投資家から高い評価を受け、経営上のメリットを得られることや、環境への意識が高い消費者に自社の商品やサービスが選ばれやすくなることなどが期待できます。

エネルギーコストの削減が見込める

自社のサプライチェーンの中においてどこで過大なエネルギーが消費されているかを把握し、適切な対策をすることでよりエネルギー使用量を削減できれば、エネルギーコストだけでなく、温室効果ガスの排出量の削減につながります。また、化石燃料由来のエネルギー使用量を減らすことで、燃料価格の乱高下による経営への影響を緩和できます。対策によっては、国や自治体から補助金を受けられる可能性があります。補助金の給付を受けることで、より少ない初期投資費用で脱炭素を推進でき、ROI(投資対効果)を高めることが可能です。

補助金にはさまざまな種類がありますが、詳しくは数多くの補助金関連の事業を所管している経済産業省のサイトをご確認ください。

経済産業省:「令和3年度予算 脱炭素化事業一覧」

社員のモチベーション向上につながる

脱炭素経営は社員のモチベーション向上につながることも期待できます。消費者やメディアから「脱炭素に取り組む先進的な企業である」という評価を集める企業となれば、社員は自社の取り組みやブランドに誇りを持ち、より意識的に脱炭素に取り組むようになります。そうすることで、脱炭素に向けた全社的な取り組みがさらに加速するという好循環を実現できます。

脱炭素社会に向けた企業の取り組み例

脱炭素社会に向けた企業の取り組み例

国際イニシアチブである「RE100」では、企業の脱炭素の取り組みを評価する枠組みとして、世界の有力企業が事業で使用する電力を再生可能エネルギー100%で調達することをめざしています。
日本企業も続々とRE100への参加を表明していますが、企業は脱炭素社会の実現のためにどのような取り組みができるのでしょうか。以下で主な取り組み例をご紹介します。

再生エネルギーの活用

再生可能エネルギーを自社に導入することで、化石燃料由来の電力消費量を抑えることが可能です。例えば、自家消費のために太陽光発電パネルを導入することなどが挙げられます。また、再生可能エネルギー由来の電力を供給している電力会社と契約を締結することも、再生エネルギー活用の1つの手段です。

省エネルギーの推進

オフィスが入っている建物や工場の生産設備のエネルギー効率を向上させるなど、省エネルギーの推進も求められます。LED照明など省エネ機器や断熱材の導入、生産プロセスの見直しなどが具体的な施策として考えられます。

ネガティブエミッション

ネガティブエミッションとは、大気中の二酸化炭素を貯留・固定化して取り除くことです。CCS(Carbon Capture and Storage)と呼ばれる炭素除去技術や、適切な植林・森林管理などの手法を通じて実施されます。
企業が実施できるネガティブエミッションの施策としては、森林保全や植林プロジェクトの支援などが挙げられます。

カーボンオフセット

カーボンオフセットは、企業の温室効果ガス排出量を削減することが難しい場合に、排出した温室効果ガス量に相当する排出量を他の手段で相殺(オフセット)することです。現在、国は太陽光発電や風力発電、植林などのプロジェクトなどに投資によって間接的に削減した二酸化炭素の排出量を公的に認証する「J-クレジット制度」を設けています。

社用車/公用車のEV化

社用車/公用車のEV化も、脱炭素化の推進において有効な施策です。EV(電気自動車)は化石燃料を使用せず、電力のみを動力源とするため、走行時に温室効果ガスを排出しないメリットがあります。
社用車/公用車をEVに置き換えることで、運転に伴う温室効果ガスの排出量を大幅に削減し、脱炭素社会に向けた取り組みを推進できます。再生可能エネルギー由来の電力でEVを充電することができれば、排出量の削減効果をさらに高めることができます。

社用車/公用車をEV化するメリットや導入の課題などについては、下記の記事で詳しく解説しています。

脱炭素の取り組みとしてEV導入に興味がある企業・自治体さまへ

世界各国は脱炭素社会の実現に向けた目標を表明しており、その実現に向けて企業は脱炭素経営を推進することが求められています。
脱炭素経営の実践は、社会的な評価の向上や社員のモチベーションアップなどにもつながることから、積極的に進めることが望ましいでしょう。

前章でご紹介したように、企業が実践すべき脱炭素の取り組みの1つに社用車/公用車のEV化があります。

以下の資料では、社用車/公用車EV化のためのノウハウをご紹介していますので、EV化に興味をお持ちの方はぜひご覧ください。

社用車EV導入ガイドブック_画像1

社用車EV導入 ガイドブック

本資料では、世界と日本のEVシフトの現状やEV導入の際に考慮すべきポイントをわかりやすくご紹介しています。社用車としてのEV導入をご検討されている企業のご担当者様はぜひご覧ください。

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