EVは本当に環境に優しい?LCAの観点から解説

自動車は数ある産業部門の中でもCO2の排出量が多く、EV化を進めることでCO2排出量を削減することが求められています。しかし、CO2排出量の評価方法によってはEVであっても排出量はゼロにならないため、「EVは本当に環境に優しいのか?」という声も一部にあります。
本記事では、EVのCO2排出量や環境への負荷について、LCA(Life Cycle Assessment)という観点から解説します。
自動車のCO2排出量
地球温暖化対策として温室効果ガスの排出削減が世界的に求められており、その中でも地球温暖化に及ぼす影響が大きいCO2の排出量をいかに減らすかが重要な課題となっています。
自動車産業はCO2排出量が非常に多いセクターです。経済産業省の資料※によると、国内のCO2の総排出量(11億800万トン)のうち、運輸部門は18.6%(2億600万トン)を構成しています。さらに運輸部門のCO2排出量の内訳を見ると、86.1%(1億7,735トン)を自動車が占めており、全体で見ても自動車は16%のCO2を排出しています。
このため、自動車の環境対策は非常に重要であり、EVシフトが効果的な選択肢となります。
※出典:経済産業省「『次世代蓄電池・次世代モータの開発』プロジェクトに関する研究開発・社会実装の方向性」
EVのLCAとは
自動車の温室効果ガスの排出量を減らすためには排出量を正確に算定する必要があり、その方法には大きく分けて3つあります。
・Tank to Wheel
自動車の燃料タンクから車輪までの間のエネルギー効率、およびCO2排出量を算定する方法であり、走行中の直接的な排出のみを考慮します。
EVは走行中にCO2を排出しないため、Tank to Wheelの観点からはゼロエミッション車であるとみなされます。
ゼロエミッション車について詳しくは以下の記事をご覧ください。

・Well to Wheel
Tank to Wheelよりも包括的な算定方法で、燃料の生産から車両の走行までの全過程を考慮します。
EVの場合、充電に使用する電力の発電方法(石炭、天然ガス、再生可能エネルギーなど)によって環境負荷が大きく変わります。
・LCA
LCA(Life Cycle Assessment)は、製品のライフサイクル全般を対象としたCO2排出量の算定方法です。原料調達から製造、輸送、使用、廃棄・リサイクルまでの全工程が評価の対象となります。
従来の方法(Tank to WheelやWell to Wheel)と比較すると、LCAではより包括的な排出量の評価が可能です。
環境に与える影響を最小化するためには、製品のライフサイクル全体を通したCO2排出量を幅広く評価することが重要です。LCAではEVの真の環境影響を考慮するため、持続可能なモビリティを実現するうえで欠かせない評価となっています。
エンジン車とEVのLCA比較
EVはTank to Wheelで考えるとCO2排出量がゼロであり、Well to Wheelでも再生可能エネルギー由来の電気で充電すれば非常に少なく測定されます。
LCAはより包括的な評価方法であるため、CO2排出量はTank to WheelやWell to Wheelよりも多く測定されます。このことから、「EVは本当に環境に優しいのか?」という疑問を持つ方もいるかもしれません。
では、LCAで評価した場合、EVはエンジン車に比べてCO2排出量はどの程度少ないのでしょうか。
一例として、日産の車種にLCAを適用すると、EVの環境性能は以下のように評価されます※。
リーフ:同クラスのガソリン車と比べ、ライフサイクルCO2排出量を約30%削減。
アリア:同クラスのガソリン車と比べ、ライフサイクルCO2排出量を約20%削減。
また、リーフ、アリアに続く量販EVであるサクラも、ライフサイクルCO2排出量を約20%削減しています。
本評価は電力製造に伴うCO2排出量を含めて算定しており、再生可能エネルギーの活用により、ライフサイクルCO2排出量を更に削減することが可能です。
環境に優しいEV導入ならEnneEV
LCAはCO2排出量を包括的な視点で評価する方法であり、EVの環境への影響をより実態に即した形で評価できます。
「LCAで評価すると、EVは必ずしも環境に優しいとは言えないのではないか?」という疑問の声も一部にはありますが、前章の日産が公表しているLCAのデータにおいては、LCAで評価してもEVは環境に優しい自動車であることがわかります。
環境対策の一環として社用車/公用車のEVシフトを進めることとなれば、EVへの充電に使う電気のことも考えましょう。環境対策とは無制限に費用をかけられるわけでありません。EVを導入する際には、電気代を抑制するスマート充電の仕組みをあわせて導入すると良いでしょう。
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最適なEV導入計画のご提案から設備機器の準備、設置工事までワンストップで対応可能です。充電制御により電気代を契約電力内にコントロールすることで、コストを抑えながらEVを導入でき、CO2排出量の削減に貢献します。
以下の資料では、EVシフトのメリットやステップをまとめているのでぜひご覧ください。

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