EV導入の課題とは?企業や社会の電力コスト増大の懸念は「充電制御」で解決!
カーボンニュートラルの実現に向け、企業や自治体が使用する自動車のEVへの切り替えが今後進んでいく見込みです。しかし、EVの導入には課題もいくつかあり、なかでも充電器の設置による契約電力(基本料金)の増加や設備増強といった自社の電力コスト増大への懸念や、EVの大量導入による供給力不足や系統容量不足に伴う社会的な電力コストの増大は、今後のEVシフトを阻む大きな課題です。
本記事では、企業や自治体がEVを導入する際に知っておきたい課題や解決のヒントについて、すでに導入が進んでいるNTTグループの事例も交えてご紹介します。
目次
自治体・企業で関心を集めるEV導入の動き
政府が2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言するなど、日本国内での脱炭素社会の実現に向けた機運が高まっています。そうした中、企業や自治体では社用車や公用車をEVに切り替える動きが今後加速していくものと思われます。社用車としてEVの導入を進めているNTTグループにおいては、2022年度末時点で全国に2,100台のEVが導入されています。
世界に比べるとEVがあまり普及していない日本でいち早くEVを導入することで、環境に配慮している先進的な企業・自治体であることをアピールできるなど、EV導入のメリットは少なくありません。しかし、EVの導入にあたっては課題も存在します。
EVシフトに関する日本や海外の現状については、以下の記事で解説しています。
また、EVのメリット・デメリットなどについては以下の記事で解説しています。
EV導入における課題
EV導入において挙げられる課題として、以下の5つがあります。
導入コスト
EVは一般的に、ガソリン車に比べ車両価格が高く、充電器の設置費用も必要となるなど、多額の導入コストがかかる傾向があります。
一方、燃料費はガソリン車の3分の1程度であり、車検・消耗品費も安価で、減税措置が受けられる点はメリットです。さらに、購入時に受けられる補助金制度もあります(2023年8月執筆時点)。導入コストだけでなく、ランニングコストも考慮すれば、全体的なコストはガソリン車と数パーセントしか変わらないという試算結果もあります(当社調べ)。EV導入時にはこれらの要素を踏まえ、トータルでのコストを考慮することが大切です。
航続距離
一度のガソリン補充や充電でどれだけ走行できるかを示す航続距離を比べると、ガソリン車は1,000kmを超える車種もある一方で、EVは500km前後ですが、生活圏内での買い物や移動、また日常的な社用車や公用車での使用に限れば、十分な航続距離ではないでしょうか。実際にNTTグループで社用車として使用しているEVの大半がこの航続距離の範囲内で営業活動ができています。
EVの航続距離については以下の記事で詳しく説明しています。
EV(電気自動車)の航続距離の目安とは?国内・海外車種別の後続距離も紹介
充電設備数
EVを利用するには充電設備が不可欠です。従来のガソリンスタンドを利用するイメージで「充電設備がまだ少ないからEVはまだ早い」と思われる傾向があるようですが、社用車や公用車での利用においては自社で充電器を保有することができますので、必ずしも公共用充電設備の利用を前提とする必要はありません。帰社後に自社の充電器に接続し朝までに充電することができます。これをプライベート充電、または基礎充電と言います。NTTグループでのEV充電もプライベート充電が基本です。毎朝、満充電の状態から航続可能な距離で帰ってくる利用方法であれば、外部の公共用充電設備の数を気にする必要はありません。
EV充電器の設置工事については以下の記事で紹介しております。
EV(電気自動車)の充電設備の設置費用はどのくらい?工事の流れ、別受電方式のメリット
現在、既に日本でのガソリン車1台に対する給油機の数よりもEV1台に対する公共用充電設備の数の方が多いので、実は充電設備の数自体は決して少なくありません。また、政府は「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の中で、2030年までに公共用の急速充電器3万基を含む充電インフラを15万基設置することを掲げていますので、今後の充電環境がさらに改善されることも期待できます。
車種の選択肢
ガソリン車に比べ、まだまだEVは車種が少ないという課題もあります。しかし、ここ数年で世界的に多くの自動車メーカーが様々なEVの車種を発表し、さらに今後も増えていくものと予想されます。ハッチバックタイプやセダンタイプなどはすでにラインナップが多くそろっていますので、用途に応じた選択が可能です。
充電する電気の発電方法
EVは走行時には温室効果ガスを排出しませんが、充電する電気が化石燃料由来の場合、発電時に温室効果ガスが発生するためクリーンではないと言われています。EV導入に合わせて電気を再生可能エネルギーに切り替えていくことで、よりEV導入の効果が高まります。NTTグループにおける事例では、充電する電気について非化石証書(再生可能エネルギー電気の環境価値を証書にしたもの)を適用した実質的な再生可能エネルギーへの切り替えを進めています。こうした取り組みにより、カーボンニュートラルの実現は可能となります。
上記の通り、課題の多くは解決可能です。しかし、EVの導入を考える上では、もう一つの大きな問題があります。それが「供給力不足」の問題です。
EV普及における供給力不足の問題
EVの導入とともにEV用の充電器が大量に設置されることで、電力需要が急増し、供給力や系統容量が不足することで多額の社会的な電力コストが発生するのではないかという懸念の声があります。
企業・自治体が保有する車両の大半は平日の昼間に利用されることから、充電のタイミングは夕方など特定の時間帯に集中しがちです。多くのEVが同じ時間帯に充電すると、電気の供給や電気を送電するための系統の容量が不足し、その解消のための発電設備や送配電設備の増設により多額のコストが発生する恐れがあります。これらコストは最終的に電気料金の大幅な値上げとして消費者に転嫁されることになります。
また、企業や自治体が保有する各ビルにおいても電力需要の増大に対応するために設備増強や契約電力の見直しが必要になる場合があります。
企業や社会の電力コストの増大は「充電制御」で解決
供給力不足の解決策としては、「充電制御」という解決策があります。充電制御とは、充電のタイミングを変えたり、出力を低くするなどして、充電をコントロールすることです。
この充電制御を活用することで、電力需要が多い夕方に充電が集中することを避け、電力需要が少ない夜間に充電することで、供給力不足や系統容量不足を解決できます。
さらに、各ビルにおいても充電器の出力をコントロールすることで、無理な節電や設備増強をせずに、契約電力の範囲内でEVを充電できるようになります。低圧施設の場合でも、高圧化などの設備増強をせずに多くのEVや充電器の導入が可能となります。もちろん、NTTグループにおいてもこの充電制御の仕組みを活用し、限られた電力設備や契約電力の中で数多くのEVを運用しています。
充電制御の仕組みやNTTグループの社用車EV化の取り組みは以下で紹介しております。
EV充電器の充電制御とは?仕組みや導入メリット、時間制御と出力制御の違いを解説
NTTグループのEV化への取り組みとは
以下の資料では、充電制御の活用イメージや充電制御あり/なしのコスト比較について解説しています。EV充電器の導入における設備投資・電気料金を抑えるポイントも紹介していますので、あわせてご覧ください。
充電制御を活用して賢くEVの導入を実現しよう
ご紹介したようにEVの導入には多くの課題がありますが、いずれも車両用途や充電器の設置方法などを十分に検討することにより解消できます。特に、充電制御は有効な解決策の1つであり、数多くの車両を有する自治体や企業でEVの導入を実現するうえで極めて重要な要素です。
以下の資料では、EVを社用車として導入する際のノウハウをご紹介しています。社用車のEVへの切り替えにご興味がある方はぜひご覧ください。
社用車EV導入 ガイドブック
本資料では、世界と日本のEVシフトの現状やEV導入の際に考慮すべきポイントをわかりやすくご紹介しています。社用車としてのEV導入をご検討されている企業のご担当者様はぜひご覧ください。