【法人向け】EV(電気自動車)の電気代はいくらかかる?
近年、多くのEV(電気自動車)が登場しており、社用車・公用車をEVに乗り換えようとする企業・自治体が増えています。しかし、「導入後の電気代がどうなるかよくわからない」という懸念が多くあるようです。そこで本記事では、EVで必ずかかる「電気代」について取り上げ、電気代が決まる仕組みと、最適解について解説します。
目次
EV(電気自動車)充電の電気代が決まる仕組み
近年、環境にやさしい車として日本でも普及し始めているEV(電気自動車)ですが、企業・自治体が導入する場合の電気代の仕組みがよくわからず、購入のハードルとなっていることも多いのではないでしょうか。
そこで、まずEV充電の電気代がどのように決まるのかについてご紹介します。
「充電方法」によって電気代は異なる
EV(電気自動車)の充電には、普通充電と急速充電の2つの方法があります。
両者の違いとしては、出力の大きさが挙げられます。
普通充電器は、出力が小さく充電に時間がかかるため、主に事業所の自社利用として使うケースが一般的です。一部、公共利用として宿泊施設や商業施設、時間貸し駐車場など、長時間の駐車時間に利用されるケースもあります。
一方、急速充電器は、出力が大きく充電を短時間でできるため、主に高速道路のサービスエリアや道の駅などに設置されているケースが一般的です。一部、自社利用として事業所に設置されているケースもあります。
電気代は、最大需要に応じて支払う基本料金と、使用した電気の量に応じて支払う従量料金で主に構成されています。
自社利用として充電器を導入する場合、基本料金については、出力が小さい普通充電器は最大需要への影響が小さく、基本料金の増加分は比較的安価に済ませることができ、出力が大きい急速充電器は増加分が多くなります。
従量料金については、普通充電も急速充電も充電によって電気を使用した量と料金単価を掛け合わせることによって電気料金が決定されますが、充電場所(後述するプライベート充電とパブリック充電)によっても料金単価は異なります。
EVの充電器については以下記事でご紹介しています。ご興味のある方はぜひご覧ください。
「充電場所」によって電気代は異なる
EV(電気自動車)の電気代は充電器の出力だけではなく、充電場所によっても異なります。
EVの充電は、充電場所によってプライベート充電とパブリック充電の2つに分けられます。
● プライベート充電
プライベート充電は、企業・自治体が自ら所有する駐車場に充電器を設置し、その充電器を専有して利用する充電のことです。プライベート充電は先ほど挙げた普通充電器で行うことが主流であり、料金は各事業所の契約する電気料金に基づき決定されます。
● パブリック充電
パブリック充電は、高速道路のサービスエリアや道の駅、カーディーラーなど、不特定多数の者が公共のスペースで共有の充電器を使用して行う充電のことです。パブリック充電は急速充電器で行うことが主流ですが、宿泊施設や商業施設、時間貸し駐車場など、長時間の滞在時間を利用して充電を行う場合は普通充電器も利用されます。
一般的に、パブリック充電は1回15分など、時間単位で料金が決まる仕組みですが、その時間単位の料金はパブリック充電の運営事業者によって異なります。また、パブリック充電は、プライベート充電と比較して料金が割高になる傾向があります。
パブリック充電が割高となる理由には、出力が大きな急速充電器の負荷に対応可能な電力設備の設置工事費や維持費が多額であることや、公共利用に必要な認証・課金システムも必要となることが挙げられます。具体的なコスト試算については次章で行います。
また、パブリック充電で外出先の目的地までの途中で行う充電を「経路充電」、目的地で行う充電を「目的地充電」と呼びます。
EV(電気自動車)の電気代の目安はいくら?
では、実際にEV(電気自動車)の電気代はどの程度になるのでしょうか。以降では、先ほどご紹介したプライベート充電と、パブリック充電についてそれぞれ、電気代の目安をご紹介します。
プライベート充電の場合(プライベート充電×普通充電器)
プライベート充電の電気代は、基本料金(単位:kW)と従量料金(単位:kWh)で算出されます。
基本料金は最大需要に応じて決定されるため、6kWの普通充電器1台を導入する場合は、「6kW×1台×基本料金単価」が月額基本料金の追加分となります。
*有効に活用された電力の割合を基本料金に反映する仕組み
例えば、東京電力のベーシックプラン(高圧)の場合、基本料金単価は1,890.0円/kW(執筆時時点)となりますので、力率割引が85%の場合、充電器1台につき、9,639円が追加の月額基本料金となります。
低圧の場合は、東京電力のスタンダードLの場合、基本料金単価は311.75円/kVA(執筆時点)となりますので、充電器1台につき、1,870.5円が追加の月額基本料金となります。
従量料金は使用した電力量に応じて課金されます。kWhとは1kWの電力を1時間使用した場合の使用電力量です。計算式は以下の通りです。
例えば、東京電力のベーシックプラン(高圧)の場合、電気料金単価は19.51円/kWh(執筆時時点)となりますので、6kWの普通充電器で充電すると、1時間あたりの電気代は、19.51円/kWh×6kWh=117.06円となります。
低圧の従量料金単価は、使用量に応じて変わります。東京電力のスタンダードLの場合、120kWhまでが29.80円/kWh、120kWhから300kWhまでが36.40円/kWh、300kWh以上が40.49円/kWhとなります。
EVのバッテリー容量は車種によって異なりますが、現在は約40kWh~60kWh程度が一般的です。したがって、6kWの普通充電器でEVを満充電するには、約7時間~13時間かかります。
仮にバッテリーを100%使い切って帰ってきた場合、フル充電にかかる電気代は、高圧であれば1時間あたり117.06円で7~13時間充電するので、およそ820円~1,500円程度、低圧であれば1時間当たりおよそ1,200円~1,800円程度と概算できます。
ただし、毎日バッテリーを100%使い切るほど乗るケースはあまりないと思われますので、より現実的な乗り方での1か月間にかかるコストについて、後ほど解説します。
パブリック充電の場合(パブリック充電×急速充電器)
パブリック充電の電気代は、充電時間で決まります。一般的に1回の充電で最大30分まで充電でき、1,000~5,000円程度の料金がかかります。計算は以下の通りです。
例えば、e Mobility Powerの急速充電器を使用する場合、利用料金単価は27.5円/分となります(執筆時時点)。急速充電で30分充電した場合の利用料金は825円かかります。こちらも後ほど詳しい試算をします。
また、パブリック充電の利用には上記の利用料金のほか、運営事業者各社が定める初回登録手数料(1,000~2,000円程度)や月会費(1,000~10,000円程度)がかかるため、その点にも注意が必要です。
プライベート充電とパブリック充電の電気代の比較
プライベート充電とパブリック充電はどちらがお得?
それでは、実際に月間600km(1日30km走行×20営業日)走行する場合の料金比較を以下で行います。
電費が6km/kWhだとすると、1か月の電力使用量は100kWhとなります。
● プライベート充電×普通充電器
高圧施設と低圧施設、それぞれ充電器1台設置して使用した場合の追加の電気代は、以下のような計算となります。
<高圧施設の場合>
基本料金:1,890円/kW × 6kW × 1台 × 0.85 = 9,639円
従量料金:19.51円/kWh × 100kWh = 1,951円
合計:11,590円
<低圧施設の場合>
基本料金:311.75円/kVA × 6kVA × 1台 ≒ 1,871円
従量料金:29.80円/kWh × 100kWh = 2,980円
合計:4,851円
これらは単純に充電器の設備容量分を基本料金に追加した場合の計算です。
高圧施設の場合、合計に占める基本料金の割合が83%にも達する結果となっていますが、後述する充電制御機能を活用すれば、このコストを抑える方法があります。
低圧施設の場合、一見安いように見えますが、低圧施設の契約容量は50kVAが上限となっておりますので、多くのEVを導入する場合は、高圧化が必要となってしまいます。
こちらについても後述する充電制御機能を使えば、低圧施設の設備容量の範囲内で多くの充電器を収容することができます。
なお、ここでは基本料金と従量料金のみに絞って計算していますが、実際には燃料費調整額や再生可能エネルギー発電促進賦課金も電気料金に加算されますので、ご注意ください。
● パブリック充電×急速充電器
パブリック充電における急速充電器の出力は、毎回終始50kWになるとは限りません。設置場所によってさまざまな出力の機種があったり、複数台同時使用の場合は出力が制限されたり、車両側の受け入れ制限があったり、充電器の熱の状態で出力が制限されたりと、最大の出力が得られない場合があります。
よって、ここでの計算では平均20kWとします。そうすると、1kWh当たりの単価は82.5円(27.5円/分×60分÷20kWh=82.5円/kWh)となりますので、以下のような計算となります。
月額料金:4,180円(e Mobility Powerの月額料金(執筆時点))
利用料金:82.5円/kWh × 100kWh = 8,250円
合計:12,430円
一見すると上記の高圧施設における料金と同等に見えますが、以下のような時間的コストも考慮する必要があります。
パブリック充電利用の場合、急速充電スタンドに行かなければいけません。加えて充電は最大30分までという各社が設けているルールがあります。平均出力20kWで考えると、30分の充電で10kWh(60km分)が1回の充電量となりますので、月600km走行する場合は10回も急速充電スタンドに通うことになります。
また、充電を待っている間の30分間や、先に利用客がいた場合、自分の番が来るまでの待ち時間も業務時間に含まれますので、この点にも注意が必要です。
EV(電気自動車)の電気代を抑えるポイント
EVは適切に運用しなければ、知らない間に余計なコストがかかってしまいます。
そこで、以降ではEVの利用時に電気代を効率的に抑える方法を3つご紹介します。
エコドライブを意識する
1つ目は、そもそもの電気使用量を増やさないため、電費の良い走り方「エコドライブ」を意識することです。例えば、急加速や高速連続走行、空調の使い過ぎなどを避けることで、電費の悪化を防ぐことができます。
また、EVの「回生エネルギーシステム」を活用することでバッテリー消費量=電気代を抑えることも可能です。回生エネルギーとは、減速時のエネルギーを電気に変換してバッテリーに戻す仕組みです。加速後や下り坂でアクセルペダルを戻し、惰性で走行することで、バッテリーの消費量を抑えることができますので、必要充電量、すなわち電気代を抑えることができます。
エコドライブの方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
エコドライブの実践方法を紹介!
電力会社の料金プランを見直す
2つ目は、現状の料金プランの見直しです。電力会社によって電気料金単価は異なるため、EV(電気自動車)導入時は自社の使用電力量や充電時間帯に合ったプランかを確認しましょう。
また、通常の電力供給だけでなく、社用車・公用車EVの導入をサポートするプランを提供している電力会社もあります。EVの導入時には、プラン内容をよく確認して、自社に合った最適なプランを選ぶことが大切です。
充電制御サービスを活用する
3つ目は、充電制御サービスの活用です。充電制御サービスとは、充電タイミングや充電器の出力を調節できるサービスのことで、電気料金の基本料金を抑えることができます。
プライベート充電×普通充電器の例では、充電器の設備容量分の契約電力が追加される試算をしましたが、充電制御を行えば既存の契約電力の範囲内に抑えることができます。
高圧施設の場合は、充電制御により基本料金の追加コストを3分の1程度に抑えることができ、設備増強コストも低減が可能、低圧施設の場合は、設備容量の上限(50kVA)を大幅に超える台数の充電器でも低圧施設内に導入することが可能です。
企業・自治体の場合、日中に車両を使用するケースが多く、複数台のEVへの充電は、夕方から夜にかけて重なります。そのため、この時間帯に電力需要が偏りやすくなります。
電力契約は、最大需要が基本料金に反映されるため、極端に電力需要が大きくなる時間帯を作らないようにすることが重要です。このような電力需要の調整も、充電制御サービスを活用することで可能となります。
以下記事は、電力のピークシフトや充電制御についてご紹介しています。ご興味のある方はぜひご覧ください。
電力のピークシフトとは?ピークカットとの違い、EV充電におけるメリットについて解説
EV充電器の充電制御とは?仕組みやEV充電への導入メリット、時間制御と電圧制御の違いを解説
EnneEV(エネーブ)の充電制御でEV導入を成功させよう
ご紹介したように、EV(電気自動車)の電気代は、充電方法や充電場所、電費などに左右されますが、充電制御を活用して適切に運用することで電気代を抑えることができます。
エネットでは、充電設備の導入や適切な設備設計をサポートし、かつ導入後はEV充電器を遠隔で充電制御することによって電気料金の上昇を抑制するサービス「EnneEV(エネーブ)」を提供しています。
EnneEVは、お客様の電気代を最大限抑制する方法を検討し、最適な設備設計や運用方法をご提案します。実際にNTTグループではEnneEVを活用し、設備コストやランニングコストの抑制を実現しています。
EVの導入支援や運用コストを最適化するEnneEVについてご興味のある方は、こちらをご覧ください。
また、以下資料では、コストを抑えるためのEV充電器の選び方について紹介しています。充電器制御あり/なしでのコスト比較も行っておりますので、こちらもあわせてご活用ください。
よくわかる EV充電器の教科書
本資料では、EV導入のカギとなる「充電器選び」のポイントをわかりやすくご紹介しています。EV導入に向けて、コストを抑えながら賢く充電器を選びたい方はぜひご覧ください。