EV(電気自動車)バッテリーの種類・容量・寿命について解説。長持ちさせるコツとは?
EVにとって、バッテリーは心臓部ともいえる非常に重要なものです。EVを長く、かつ快適に乗りこなすためにはEVバッテリーに関する正しい知識を知っておく必要があります。しかし、「EVを導入したいが、EVバッテリーとはどのようなものかよくわからない」という方もいるのではないでしょうか。
本記事では、EVバッテリーの種類や容量、寿命や、バッテリーの劣化を防ぐ方法を解説します。
目次
EVバッテリーの基礎知識
はじめに、EVバッテリーの種類や容量などの基礎知識を解説します。
EV(電気自動車)に搭載されている2つのバッテリー
EVのバッテリーには「駆動用」と「補機用」の2種類があります。
駆動用は、EVを走らせるための電力を供給するバッテリーです。高電圧仕様で、最高出力や走行距離などEVの性能を左右する重要な役割を持ちます。
補機用はライト、オーディオ、パワーウィンドウなどの電装品に電力を供給するためのバッテリーです。一般的には12Vの鉛蓄電池を使用しています。
電装品は12Vで動作する仕様となっており、駆動用の電圧を下げて電装品に電力供給するのは非効率であるため、2種類に分かれています。
以下の記事では、EVのバッテリー切れである「電欠」について解説していますのであわせてご覧ください。
また、以下の記事ではEVバッテリーの燃費(電費)について解説しています。
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EVバッテリーの種類
一般的な駆動用バッテリーには、主に大容量のリチウムイオン電池(LiB)が使われています。
リチウム塩と有機溶媒からなる電解液が利用されており、リチウムイオンが正極と負極の間を移動することで充放電する仕組みです。
近年の技術発展により、リチウムイオン電池は高い充放電特性を持つようになり、EVのような高出力を必要とする用途に適しています。他の二次電池と比較して同じ体積で多くのエネルギーを蓄えることができ、省スペース化に貢献するため、駆動用として用いられています。リチウムイオン電池は長寿命で優れたサイクル特性を持ち、充電・放電を何度も繰り返せる点が特長です。
補機用バッテリーに利用されている鉛蓄電池は大きな電流を扱うことができ、コストも比較的低く、さまざまな温度条件下でも安定した性能を発揮できます。適切に使用すれば充放電サイクルを3,000回以上繰り返すことができ、使用済みの鉛蓄電池はほとんどの部分が再利用可能なことから、補機用バッテリーに用いられています。ただし、鉛を使用するため重量は重い傾向があります。
EVバッテリーの容量
EVのバッテリー容量は「kWh(キロワットアワー)」で表記されます。kWh とは、1キロワット(kW)の電力を1時間(h)使用した際の電力量のことであり、1kWh = 1kW × 1時間となります。
一般的なEVのバッテリー容量は 35〜80kWhですが、車種によってかなりの幅があり、小型車・軽自動車では20kWh程度、大型車では80kWh以上のものもあります。
・容量と走行距離の関係
バッテリー容量が大きくなれば一般的に走行距離は伸びますが、単純に比例関係になるわけではありません。
日産の車種を例として挙げると、20kWhの日産サクラの走行距離は180km (WLTCモード)であり、40kWhの日産リーフは322km (WLTCモード)です。バッテリー容量は2倍ですが、走行距離は2倍にはなっていないことがわかります。
EVバッテリーの寿命はどれくらい?
EVバッテリー(リチウムイオン電池)の一般的な寿命は「8年または16万km」であり、どちらか早い方が適用されます。「8年または走行距離24万km」としているメーカーもあります。
EVバッテリーは、電球のように寿命を迎えたタイミングで突然機能を失うわけではなく、機能が徐々に経年劣化していく点が特徴です。なお、ここでの寿命とは「EVとしての使用に支障を来すようになった状態」のことであり、より具体的には「新品時の満充電容量の70%程度に低下した状態」を指します。
EVバッテリーは、基本的に充電と放電のサイクルを重ねるごとに劣化が進みます。満充電状態での長期放置や、完全放電状態での長期放置も劣化を加速させる原因です。また60°C以上の高温環境で使用すると、バッテリー内の化学反応が活発になり劣化しやすくなります。
EV充電器の詳細については以下の記事をご覧ください。
EVバッテリーの劣化を防ぐ方法
EVバッテリーの劣化を防ぐ方法としては、以下の3つが挙げられます。
運転時にスピードを出しすぎない
高速走行はバッテリーに大きな負荷をかけるためバッテリーが高温になり、劣化を進ませてしまいます。適度な速度で走行することで、バッテリーへの負担を軽減し、寿命を延ばすことができます。急加速や急ブレーキを避け、なめらかな運転を心がけることも重要です。
安全運転という観点からも、法定速度を守ってスピードを出しすぎないようにすることが求められます。
急速充電器を使いすぎない
急速充電は30分から1時間程度で充電が完了するため便利ですが、急速充電時には大きな電流が流れバッテリーの温度が上昇します。この熱がバッテリーの劣化を促進するため、頻繁な使用は避けるべきです。
日常的には普通充電を利用し、急速充電は長距離走行時など必要な場合に限定することが望ましいでしょう。
EVの充電時間の詳細については以下の記事をご覧ください。
高温環境下での保管を避ける
高温はリチウムイオン電池の大敵です。前述のように、60°C以上の高温環境ではバッテリー内の化学反応が活発になり、劣化が加速します。
可能な限りEVを涼しい場所に駐車し、直射日光を避けることが重要です。夏場の炎天下での長時間駐車は避け、日陰や屋内駐車場を利用する、日除けシートを使うなどの配慮が求められます。
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EVバッテリーについての正しい知識を身につけよう
EVバッテリーに使われるリチウムイオン電池は、充電・放電を何度も繰り返すことができ、高い耐久性を持ちますが、使用に伴う劣化は避けられません。
しかし前章で解説したように、劣化をもたらす原因をなるべく避ける使い方を意識することで長持ちさせることが可能です。寿命を長持ちさせることができればより高い燃費(電費)で走行できるため、環境に優しく、しかも経済的です。
以下の資料では、社用車/公用車のEV化を検討している企業・自治体向けに、EV充電器の選定・設置に関するノウハウを紹介していますので、ぜひご覧ください。
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