EV充電器の充電制御とは?仕組みや導入メリット、時間制御と出力制御の違いを解説

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企業・自治体におけるEV(電気自動車)の導入拡大に伴い、複数台の充電器の同時使用などにより電気料金や設備コストが増大するといった課題が発生しています。また、社会全体でEVが普及した場合、特定の時間帯にEVの充電が集中することによる電力の供給力不足も懸念されています。そこで重要になるのが、充電の出力や時間帯をコントロールする「充電制御」システムです。
本記事では、充電制御システムの導入メリットや制御方法の違いなどを解説します。

目次

充電制御とは?

充電制御とは、充電開始/停止のタイミングを変えたりや出力を低くするなどして充電をコントロールすることです。これにより、電気料金の増大につながる契約電力の変更や設備増強をせずに数多くの充電器を運用することができます。

EV(電気自動車)における充電制御の方法は大きく、自動車本体が持つ「タイマー充電機能」を活用する方法と、EV充電器を遠隔で制御する「充電制御システム」の2種に分類できます。

以下で、それぞれの仕組みについて見ていきましょう。

タイマー充電機能

タイマー充電機能とは、EV(電気自動車)の充電時間帯を設定できる機能です。この機能はEV本体に搭載されています。

タイマー充電機能を使う際は、まず事前にEV本体で充電開始/停止タイミングを設定します。すると、設定した時間帯に自動的に充電が開始/停止されます。これにより、時間帯別料金を契約している場合、料金の安い時間帯に充電することが可能です。

このような、充電時間を事前に設定して充電することを「時間制御」などと呼びます。

充電制御システム

充電制御システムとは、EV充電器を遠隔で制御するシステムです。この様なシステムには、タイマー充電機能と同じく、時間制御によって充電開始/停止時間を指定するだけでなく、充電器の出力、具体的には電気の流れる量「電流値」を制御できるシステムもあります。

このような、充電器の充電出力を制御する機能を「出力制御」などと呼びます。出力制御を活用すると、例えば、6kWの普通充電器を10台設置した場合、通常出力は合計60kWとなりますが、出力制御により出力を70%(4.2kW)に抑えることで、合計の出力を42kWに抑制するといった運用ができます。

時間制御と出力制御の両方の機能を搭載した充電制御システムの場合、充電器が設置されたビルの契約電力や電力設備の容量を考慮した充電が可能となります。

時間制御と出力制御のイメージ
(事例)ビル側の電力消費が増える日中の7時~19時までは充電器側の出力をゼロ(充電器を挿しても充電しない設定)とし、ビル側の需要が減少する19時~翌朝7時までの時間帯に充電器側の出力を6kWまで上げる設定の例時間制御と出力制御のイメージ

なお、複数台の充電器を導入する場合は、複数充電器の合計出力に基づき制御する必要があるため注意が必要です。

国内でも必要性が高まる充電制御

経済産業省は、国内でEVが普及することで、仕事からの帰宅時間といった特定の時間帯に充電が集中し、電力の供給力不足が起こることを懸念しています。供給力不足の対策として充電制御を有する充電器の導入を義務付けるべきかを検討しているところです。

EVの導入が社会・環境に与える影響や、企業にとってのメリット・デメリットなどについては、以下の記事で詳しく解説しています。

日本国内におけるEV導入の現状やEV普及に向けた課題などについては、以下2つの記事で詳しく解説しています。
「EVシフト」とは?日本と海外の現状、今後の動向について解説
EV導入の課題とは?企業や社会の電力コスト増大の懸念は「充電制御」で解決!

充電制御システムの導入メリット

充電制御システムの導入メリット

充電制御システムの導入には以下のようなメリットがあります。

電気料金の増大回避

EV充電器の充電制御を行うことで、設置されたビルの消費電力が上昇する時間帯を避けて充電することや複数台の充電器の合計出力を一定の値を超えない様に制御することで、ビルの契約電力を超えずに充電できるようになります。これにより、契約電力の上昇を回避することができます。

多くのビルにおいて契約電力は当月を含む過去1年間の最大使用電力で決まります。企業ではEVの充電は業務時間が終了する夕方に集中することが多く、充電制御を行わなかった場合に契約電力が大幅に増大する恐れがあります。

EVの運用にかかる電気代については以下の記事でも紹介しております。
【法人向け】EV(電気自動車)の電気代はいくらかかる?

設備増強コストの抑制

既存の電力設備の容量に余裕がない場合、EV充電器を複数台設置すると容量不足となり、設備増強が必要になります。

また、既存設備が低圧受電設備の場合、EV充電器の導入台数が多く、使用電力が50kWを超える場合は、高圧受電設備の導入を検討する必要があります。規模にもよりますが高圧受電設備の導入にともなう設備増強コストは、設置工事費とあわせて数百万円に及ぶ場合もあります。

また、既に高圧受電施設である場合においても、充電器の台数が多くなれば変圧器容量の増設といった追加コストが必要となります。

しかし、時間制御や出力制御が可能な充電制御システムを導入すれば、低圧施設のまま、あるいは高圧施設の設備容量内でより多くの充電器の運用が可能になるため、設備増強コストを抑制することが可能となります

EV充電器の設置費用については以下の記事でも紹介しております。
EV(電気自動車)の充電設備の設置費用はどのくらい?工事の流れ、別受電方式のメリット

EV普及時の供給力不足の解決

今後、EVの普及が進み、特定の時間帯に充電が集中した場合、社会全体として電力の供給力が不足し、その解消のために発電設備や送配電設備の増強が必要となる恐れがあります。これら設備増強コストを回収するために電気料金が高騰する可能性も指摘されています。

充電制御によって電力消費が多い時間帯の充電を避けることで、こうした課題も解決することができます。

詳細は以下の記事で解説しております。
EVシフトを進めると電力が不足する?「充電制御」による解決策

EV導入時は、最適な充電制御システムの選定を!

これまで説明したように充電制御によって、契約電力や設備容量の範囲内で複数台の充電器の導入・運用が可能となり、コストを抑えることができます。また、将来発生する可能性がある電力の供給力不足にも対応できることから、EV導入時は充電制御システムの導入も検討することが重要です。

なお、充電制御システムの選定にあたっては、EVを導入する企業や自治体において保有しているEV台数や運用方法、求められる信頼性や導入コストを踏まえて適切なシステムを選定することが重要です。複数のEV充電器の制御が可能か、屋外の充電器設置に適した通信方式か、機器構成が冗長で信頼性を損なっていないか、出力制御は可能か、などの確認が必要になります。

例えば2022年度末時点で全国に2,100台のEVを社用車として導入しているNTTグループにおいても、EV導入に伴う電気料金や設備増大コストの抑制を目的として充電制御システム(EnneEV)を導入しています。EnneEV(エネーブ)は、時間制御と出力制御に対応しており、複数充電器の制御やEVの使用用途に適した通信や機器構成を有したサービスとなっています。

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以下の資料では、EV充電器の選び方のポイントや充電制御システムの活用イメージについて解説しています。充電制御あり/なしでのコスト比較も行っておりますので、ぜひご覧ください。

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