社用車/公用車をEV化するメリットとは?よくある導入課題や解決策も紹介
カーボンニュートラルの実現に向けて、社用車/公用車のEV(電気自動車)化を進めている企業や自治体が増えています。EV化には多くのメリットがある一方で、初期コストなどの面で課題もありますが、別受電方式やスマート充電といった手段をうまく活用することで課題の解消が可能です。
本記事では、社用車/公用車をEV化するメリットやよくある導入課題、その解決策をご紹介します。
目次
国内で進む社用車/公用車の「EV化」
地球温暖化対策が世界的に強く求められる中、日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出量を実質的にゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を目指しています。この政府の方針を受けて、営業車やバス、運送車両などをEV(電気自動車)に切り替える「EV化/EVシフト」を進める企業・自治体が増えています。
また、国内外のEV化の動向や、EVに関する基礎知識については以下の記事をご覧ください。
「EVシフト」とは?日本と海外の現状、今後の動向について解説
EV(電気自動車)のメリット・デメリット、導入が進む背景、環境にやさしい理由とは?
国内ではさまざまな業種・業界でEV化を進めている企業・自治体があり、「EV100」への参加を表明する企業もいます。EV100は、2030年までにすべての車両をEV化することを目標とする、2017年9月に発足した国際的イニシアチブです。日本国内でEV100に加盟している企業としては以下の7社があります(2024年3月現在)。
・日本電信電話株式会社(NTT)
・イオンモール株式会社
・アスクル株式会社
・東京電力ホールディングス株式会社
・株式会社髙島屋
・株式会社関電工
・ニチコン株式会社
出典:日本気候リーダーズ・パートナーシップJCLP事務局「RE100・EP100・EV100国際企業イニシアチブについて」
例えばNTTグループでは、2030年までにEV化100%を達成する目標を掲げ、取り組んでいます。
NTTの取り組みの詳細については以下の記事をご覧ください。
社用車/公用車のEV化で得られるメリット
社用車/公用車のEV化の主なメリットとしては以下の3つがあります。
節税対策になる
自動車関連の税金としては、購入時にかかる「環境性能割」、新車登録時と車検(継続検査)時にかかる「自動車重量税」、そして毎年1回納める「自動車税」があります。
このうち、本稿執筆時点では、EVに対する環境性能割は非課税となっています。また、自動車重量税には「エコカー減税」、自動車税には「グリーン化特例」と呼ばれる減税制度が適用されるため、節税を通じた車両の維持管理コストの削減が可能です。
燃料費を抑制できる
税金だけでなく、燃料費を抑えられることもEVのメリットです。EVとガソリン車が同じ距離を走行した場合、適切な設備を構築できれば、EVの充電にかかる電気料金はガソリン車の燃料費より安価になります。営業車など普段から運転する機会の多い自動車を保有している場合、コスト削減効果を得ることができます。また、給油のためにガソリンスタンドに移動する手間もかかりません。
電気料金の詳細な試算については以下の記事をご覧ください。
【法人向け】電気自動車の電気代はいくらかかる?
イメージアップ・ESG投資の対象となる期待ができる
近年は、社会課題の解決に向けたCSR活動に取り組む企業やESG(Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)のこと)を考慮した経営を行う企業が評価されるようになってきました。そのため、環境問題の解決に向けた取り組みの一環としてEV化を積極的に行うことで、社会的・環境的な意義だけでなく、企業のイメージアップや資金調達などの面でも効果が期待できます。
EVが環境・社会に与えるメリットについては、以下の記事で詳しく解説しています。
EV(電気自動車)のメリット・デメリット、導入が進む背景、環境にやさしい理由とは?
EV(電気自動車)はSDGsにどのように貢献する?
社用車/公用車のEV化にともなう課題とは?
一方で、社用車/公用車のEV化には以下のような課題もあります。
初期コストがかかる
1つ目は初期コストの面での課題です。
EV導入時に考慮すべき初期コストとしては、①車両購入コスト、②充電器設置コスト、③電力設備増強コストの3つがあります。
①の車両購入コストに関して、EV(電気自動車)の車両費は徐々に低価格のものも販売されるようになってきてはいますが、一般的にはガソリン車に比べてまだ高額です。
②の充電器設置コストについてですが、普通充電器は1台約30万円、設置費用は30-40万円であり、急速充電器の場合は1台約200-300万円、設置費用は電力設備状況によって大きく変動します。急速充電器は充電出力が高く短時間での充電が可能ですが、本体価格だけでも多額の費用がかかります。また、急速充電器はメンテナンス費用も高額となります。
③については、既存電力設備の容量に余裕がない場合は設備増強コストが必要となります。設備増強方法としては一般的に以下の3つが挙げられます。
1.既存の高圧設備の増強(変圧器容量の増設など)
2.既存の低圧設備から高圧設備への変更(高圧受電設備の設置など)
3.別受電による新規低圧設備の設置
しかし、1・2を選択した場合、初期費用が高額となります。そのため、後述するように3の別受電方式が有力な選択肢となります。
以下の資料では、初期・運用コストを抑えるためのEV充電器の選び方について紹介しています。あわせてご覧ください。
契約電力の増大
企業/自治体では、オフィスなどの電力需要がピークを迎える時間と、帰社したEVの充電タイミングが重なるケースがあります。このような場合、EVの導入前よりも電力の最大需要量が増加し、契約電力が増大する可能性があります。
公共の充電スタンドが少ない
公共の充電スタンド数は、ガソリンスタンドの数と比較すると決して多くはありません。この点はデメリットのように思われますが、EVはスタンドに行く必要がなく、自社で充電できるのがメリットともいえます。
自社に充電設備を設置する際の費用の目安については以下の記事で紹介しています。
EV(電気自動車)の充電設備の設置費用はどのくらい?工事の流れ、別受電方式のメリット
社用車/公用車のEV化を阻む課題の解決方法
では、上記のようなEV化のハードルを解消するためにはどうすれば良いのでしょうか。その解決策を以下でご紹介します。
EV(電気自動車)補助金制度を利用する
日本では、EVシフトを促すためにEVの導入コストを一部減額できる補助金制度が設けられています。例えば、代表的な補助金である「CEV(クリーンエネルギー自動車)補助金」では、2023年度においてEVの購入費が最大で85万円まで補助されます。
補助金制度はEVの種類などによって上限額や適用要件があるものの、活用することでEV導入の初期費用を抑えることが可能です。ただし、要件によっては補助金が計画通り交付されない恐れがあることや、何らかの理由で車両を手放すことになった場合、補助金の返納が必要となる場合もあり、注意が必要です。
別受電方式を取り入れる
企業/自治体がEV充電器を複数台設置する場合、既存の電力設備に余裕がなければ増強する必要があり、多くの費用がかかります。しかし、既存の低圧/高圧設備とは別に低圧線を引き込むことで、高額な設備増強を行わずに済みます。
こうした方式は「別受電方式」などと呼ばれ、企業/自治体は社用車/公用車をEV化する際に別受電方式を取り入れることで、設備増強コストを最小化することが可能です。
自社拠点でスマート充電を行う
ガソリンスタンドでの給油が原則であるガソリン車に対して、EV(電気自動車)は、自社拠点で充電器を設置し、充電することが可能です。
公共用EVスタンドで充電すると自社で充電するよりも割高な電気料金がかかりますし、就業時間に充電スタンドに行く手間も発生します。そのため、公共のEV充電スタンドは補助的な充電手段と捉え、基本的には自社拠点での充電を最適化することが重要です。
自社拠点における「充電の最適化」としては、充電制御を行うことが効果的です。充電制御は充電器のオン/オフのタイミングだけでなく、充電出力も自動でコントロールできます。これにより、契約電力を増加させることなく、設備増強を伴わないスマート充電が可能となり、運用コストの抑制が期待できます。
一例として、NTTグループでは、2024年3月末時点でスマート充電が実施可能な充電器を約200か所で1,000台程度導入済みであり、その多くで別受電方式を採用し低コストな運用を実現しています。
また、充電制御をしない場合に必要となる設備増強コストを、充電制御により大幅に削減することに成功しており、すでに10か所以上で実現済みです。
充電制御については以下の記事で詳しく紹介しております。
2035年(新車販売で電動車100%)に向けて社用車/公用車のEV化を進めよう
社用車/公用車のEV化は環境面でのメリットがあるだけでなく、税制面での優遇といったコスト面や、社会的なイメージアップ、ESG投資の呼び込みといったメリットがあります。
一方で初期コストがかかり、契約電力増大の可能性があることなどが課題ですが、今回ご紹介した補助金制度の活用や別受電方式、スマート充電の導入などうまく対応することで、こうした課題を抑制できます。2035年にはガソリン車の新車販売が原則廃止されるため、今からEV化の検討を計画的に進めることをおすすめします。
株式会社エネットが提供するEVスマート充電サービス「EnneEV(エネーブ)」は、充電制御により電気料金の上昇を抑制するサービスであり、すでにNTTアノードエナジー株式会社を通じて全国のNTTグループ各社で活用されています。
NTTグループではガソリン車をEVに置き換えるだけではなく、充電制御により設備増設や契約電力の増大を抑え、さらにピーク時間を避けて充電することでEV充電による需給逼迫といった社会的課題解決に取り組んでいます。
EnneEVは豊富な実績とノウハウでお客様のEV導入をトータルでサポートします。法人における最適なEV導入計画のご提案から設備機器の準備、設置工事までワンストップでご対応可能です。
以下の資料では、EV導入を進める際に必要なステップや注意点について詳しく解説していますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
社用車EV導入 ガイドブック
本資料では、世界と日本のEVシフトの現状やEV導入の際に考慮すべきポイントをわかりやすくご紹介しています。社用車としてのEV導入をご検討されている企業のご担当者様はぜひご覧ください。